久しぶりに小説更新です。
窓から空を見てたら「あ、屋上」と思い浮かんだので(何で)
「場所は屋上」「暗くない話」とだけ自分の中で決めて書きました。
暗くはならなかった、よ…!
ここに載せてるのも今書き溜めてあるのも全部暗いから
ここでひとつ、暗くないものを。
でも爽やかにはなれなかった。そりゃそうだ、私自身が爽やかさに欠けてる。
続きでどうぞ!
窓から空を見てたら「あ、屋上」と思い浮かんだので(何で)
「場所は屋上」「暗くない話」とだけ自分の中で決めて書きました。
暗くはならなかった、よ…!
ここに載せてるのも今書き溜めてあるのも全部暗いから
ここでひとつ、暗くないものを。
でも爽やかにはなれなかった。そりゃそうだ、私自身が爽やかさに欠けてる。
続きでどうぞ!
【屋上ダイブ】
昼休みに入ってすぐ、望は屋上に来た。
この学校の屋上へ続く扉は常に開放されているのだが、ここへ人が
来ることはほとんどなく、穴場と言ってもいい場所だった。
時折1人になりたくなると望はここに来て、備え付けのベンチに座って
空を眺めていたりする。
今日は、授業中教室から見た外がなんだかとても青かったので
柄にもなく外に出たくなってしまったのだ。
ベンチに座り、雲がゆっくりと流れている様を眺める。
そうして数分もすると、頭は今日の夕食とか、図書室に入る新刊の事といったと
りと
めのない
思考をめぐらせ始め、視覚はただぽっかりとそこにある空を映している。
外界を遮断した状態だ。
そんなところに、背後の扉を開く音がして、望はびくっと我に返り、首を背後に巡らせた。
そこに居たのは見知った顔、いやそれ以上に親しい仲の教え子で。
望は身体の緊張を解いた。
「久藤くん」
「先生、何してるんですか?まさか飛ぼうなんて考えてないよね?」
失礼な、と言える口を望は持ち合わせていなかった。
だから笑って空を指差す。
「違いますよ。ほら、空が綺麗でしょう?そうしたら急に外に出たくなってしまって」
「…そうなんですか」
安堵したように息をつき、准は隣へ座ってもいいかと尋ねた。
「ええ、どうぞ」
少し端に寄り、隣を手で示すと准は望と数センチの至近距離に腰を下ろした。
体温を感じるか感じないかのギリギリの距離に、望は恥ずかしさから
居心地悪そうに肩を縮こめた。
そうと悟られないように何気ない振りで、問いを発した。
「久藤くんはどうしてここに?」
そういえば、彼はいつも授業中と食事中以外手放さない本を持っていなかった。
ここに来るなら、静かな読書が目的かと思ったがそれは違うらしかった。
「先生をね、探してたんです」
「…それはまた。何か用事でしたか?」
「ええ」
またにこっと微笑んで准は更に間合いを詰めた。
「ちょっと、久藤くん、近…」
声は唇に吸い取られて、形を成さなかった。
「僕もう先生に三日も触れてないんです」
唇を離した准が珍しく不満げに言うので、望は可笑しくなった。
顔を横に向けて、小さく吹き出した。
「何で笑うんですか」
「…いえ、初めてそんな久藤くんの顔を見たものですから、済みません」
律儀に謝り、望は少し考える。そしてぱっと笑顔になった。
いつになく楽しげな笑みに今度は准が面食らう。
「久藤くん。…わたしの膝、貸しますよ」
「え、それって」
「…膝枕、です」
自分で提案した癖に妙に照れて口ごもる。
准は破顔した。
「……それ、凄くいい提案です」
「喜んで貰えました?」
「はい、とても。…じゃあ、早速」
どうぞ、と促されて准は望の膝に頭を預け、ベンチに仰向けに寝転んだ。
身長が標準より少々高めの准がよこになってもまだ少し余裕がある。
眩しさに目を細める。
「あ、眩しいですよね」
それに気付いた望が片手で准の目蓋を覆った。
望の手はひやりとしていて、心地よかった。
「先生」
「はい」
「……好きです」
色々、言いたいことはあったけれど、結局はシンプルな言葉になった。
望はしばらく黙って、そうして楽しげに答えた。
「知っていますよ!」
明るい声が空に弾けた。
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